5時からはじまる甘い罠。




どんな反応を返せばいいのか、わからない。


なにも考えられない。とりあえず……


頭の許容量を状況が超えて、わたしは逃げ出すために自分の席にある鞄をつかんだ。


走り出そうとしたとき、

彼は慌てて口を開いた。



「ちょ、待って!」



「…う」



わたしはとっても迷って、ギリギリ踏みとどまって、それでも彼に背中を向けたままだった。


更科くんはわざわざわたしの前方まで回り込んで、わたしの腕を掴むと、手のひらの上にドラえもんの鈴を乗せた。



「え…」



「探してるんでしょ?」



更科くんはいたずらっぽくわたしの目を覗き込むと、にこりと笑った。


誰もが好きになってしまうような、そんな顔。



「体育の時落としたの、やっぱり気づいてなかったね」