どんな反応を返せばいいのか、わからない。
なにも考えられない。とりあえず……
頭の許容量を状況が超えて、わたしは逃げ出すために自分の席にある鞄をつかんだ。
走り出そうとしたとき、
彼は慌てて口を開いた。
「ちょ、待って!」
「…う」
わたしはとっても迷って、ギリギリ踏みとどまって、それでも彼に背中を向けたままだった。
更科くんはわざわざわたしの前方まで回り込んで、わたしの腕を掴むと、手のひらの上にドラえもんの鈴を乗せた。
「え…」
「探してるんでしょ?」
更科くんはいたずらっぽくわたしの目を覗き込むと、にこりと笑った。
誰もが好きになってしまうような、そんな顔。
「体育の時落としたの、やっぱり気づいてなかったね」

