……久し振りに、自分の気持ちを、人に伝えるという行為をした。 動悸がすごい。心拍数、血圧、全てが沸騰して、倒れてしまうような気がする。 ……けどわたしは、それでもちゃんとここに立っていた。 彼は少しだけ驚いたようだけど、すぐに普通の表情に戻って、ゆるく唇を上げた。 「やっぱ喋れんじゃん。 『橘さん』」 わたしは目を丸くして、立ちすくんだ。 この人……。 もしかして今、わたしの名前を呼んだ?