俺は全てを理解して、そして、自分の馬鹿さに小さなため息をつく。
「……廉くん、お誕生日、おめでとう」
今日、1月23日は俺の誕生日だった。
俺ですら忘れていたことを、ちゃんと覚えていたらしい栞菜は、
すっかり驚かされた俺を得意げに見て、
「サプライズ、大成功だね」
と暗闇の中で笑った。
「こっそり持ってくるの、大変だったんだよ」
何度も廉くんにバレないか不安だった、と赤くなる彼女に、
すっかり騙されたことが悔しいやら、嬉しいやらで、脳内は乱れまくっている。
「…ケーキ…栞菜が作ったの?」
俺がぼんやりと尋ねると、彼女は恥ずかしそうにうなずいた。
「下手くそなんだけど……」
お皿とフォークを差し出された俺が、栞菜から緊張の眼差しを向けられながら、
ケーキを口にする。
「……どう?」
不安そうに尋ねる栞菜に、美味しいよ、と素直に答えると、
「よかったあ…」
栞菜は花がほころぶように笑った。
「廉くん、お腹空いたって言うから、早く食べてもらわなきゃって焦っちゃった」
照れたような瞳。
また、抱きしめたい衝動が、俺を支配する。