5時からはじまる甘い罠。




驚いて立ち止まると、わたしの足音に気づいていた彼はゆっくりと振り向いた。



「……あ。よかった。

まだ帰ってなくて」



彼は、廊下のドア近くに立ちすくんだままのわたしに、近づく。



「待ってたんだ。

鞄がまだ席にあったし。

俺、今日のこと謝りたくて。

それから、渡したいものも」



……頭の全機能が停止している。


こんなときなのに、わたしは、彼の透き通る瞳に夕焼けが反射するさまを綺麗だと考えた。


緊張したときに心臓のあたりを握る癖は、ずっと昔から変わらない。



どうしよう。