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しばらくして、廉くんはトイレから出てきた。
苦しそうな、表情。
「ちょっとモテ王子。
過去くらい清算しとけよな、わらしに迷惑かけんなよ」
廉くんに向かっても相変わらず、ずけずけとのたまう里奈ちゃん。
廉くんは、素直にうなずいた。
「こんなことになってるなんて、知らなかった。
おかげで助かった」
「ほんとだよ。
貸し100ね、王子」
里奈ちゃんはさっぱりと笑った。
「栞菜、ほんとに……ごめん」
廉くんの顔が見られない。
わたしがこんな顔をさせてるかと思うと、身が切られるほどつらかった。
「わたしが悪いんです。
ごめんなさい」
廉くんは何かを考え込んでいるようだった。
「……栞菜。
家の用事なんて、嘘だよね」
「……」
ごめんなさい。
かすれた声は、聞こえたかわからない。

