わたしはぼんやり、廉くんも、焦ることあるんだ…と場違いなことを思う。
「そのほっぺたどうしたの?」
「……廉」
冷たい、責めるような廉くんの言葉に、元カノの先輩が怯えた声を上げた。
廉くんは彼女を見て、小さくため息をついて、眉を寄せた。
「……ごめん、俺、もうお前とは関係ないつもりだった。
でも、話なら聞くから。
だから、この子にはなにもしないでよ。
なにも悪くないんだよね。
ただ、俺から一方的に巻き込んでるだけだから」
そう言われた先輩は、黙ってうつむいてしまう。
その姿は、すごく傷ついて、悲しそうに見えた。
「は?ちょっと、どういうこと」
ヒステリーな声を上げるまわりの先輩たちを無視して、里奈ちゃんはわたしの手をとって、無理矢理連れ出した。
「ほら、いくよ、わらし!」
わたしは、引っ張られるまま女子トイレを出た。

