5時からはじまる甘い罠。





わたしはぼんやり、廉くんも、焦ることあるんだ…と場違いなことを思う。



「そのほっぺたどうしたの?」



「……廉」



冷たい、責めるような廉くんの言葉に、元カノの先輩が怯えた声を上げた。


廉くんは彼女を見て、小さくため息をついて、眉を寄せた。



「……ごめん、俺、もうお前とは関係ないつもりだった。

でも、話なら聞くから。

だから、この子にはなにもしないでよ。

なにも悪くないんだよね。

ただ、俺から一方的に巻き込んでるだけだから」



そう言われた先輩は、黙ってうつむいてしまう。


その姿は、すごく傷ついて、悲しそうに見えた。



「は?ちょっと、どういうこと」



ヒステリーな声を上げるまわりの先輩たちを無視して、里奈ちゃんはわたしの手をとって、無理矢理連れ出した。



「ほら、いくよ、わらし!」



わたしは、引っ張られるまま女子トイレを出た。