……そんなんじゃない。
そう言いたくても喉は干からびたようだし、心臓の音もすごい。
わたしは心臓のドラえもんをぎゅっと握りしめた。
「ち、ちがいます……。誤解です。
付き合って、ません。なんの関係も、ないです」
緊張からか、息継ぎの合間に、ひゅっと妙な音が出た。
「廉くんは優しいから。
だからこんなわたしにも、仕方なく話しかけてくれるだけで…」
毅然とした声を出したつもりだったのに、随分弱々しくなってしまう。
自分で言ったことに傷ついている自分がいた。
……なんて、ばかみたいな……。
それでも彼らの耳には届いたようだ。
「え、まじ?
違うんだ」
「てっきり信じたよなー」
それで、全身の力が抜ける。
ちゃんと、伝わった。
「まあ、更科はよくわからないから」
「あいつ、あんなにモテるのに、女子と話すのとか珍しいしね」
また噂で盛り上がる男子。
わたしはほっとして、溜息をつく。
……よかった。
言いたいこと、言えた。
誤解、解けたよ、廉くん。
わたし、すこしずつ強くなれてる?

