5時からはじまる甘い罠。




……そんなんじゃない。


そう言いたくても喉は干からびたようだし、心臓の音もすごい。


わたしは心臓のドラえもんをぎゅっと握りしめた。



「ち、ちがいます……。誤解です。

付き合って、ません。なんの関係も、ないです」



緊張からか、息継ぎの合間に、ひゅっと妙な音が出た。



「廉くんは優しいから。

だからこんなわたしにも、仕方なく話しかけてくれるだけで…」



毅然とした声を出したつもりだったのに、随分弱々しくなってしまう。


自分で言ったことに傷ついている自分がいた。


……なんて、ばかみたいな……。


それでも彼らの耳には届いたようだ。



「え、まじ?

違うんだ」


「てっきり信じたよなー」



それで、全身の力が抜ける。


ちゃんと、伝わった。



「まあ、更科はよくわからないから」



「あいつ、あんなにモテるのに、女子と話すのとか珍しいしね」



また噂で盛り上がる男子。


わたしはほっとして、溜息をつく。



……よかった。


言いたいこと、言えた。


誤解、解けたよ、廉くん。


わたし、すこしずつ強くなれてる?