5時からはじまる甘い罠。






人気のない図書室のまえでわたしは、本題を切り出す。



「……あの、今週、特訓をお休みしたいんです」



すみません、と頭を下げると、


廉くんは片眉をあげた。



「いや、それは全然いいけど。

……なんかあったの?」



心配そうな廉くんに、わたしは慌てて首を振った。



「……いえ、あの!

その、しばらく、ずっと、家の用事で……」


ごめんなさい、と言うと、


廉くんはそう……、とうなずいた。



「そんなに謝らないでよ、大丈夫だから。

たまには休んで、羽伸ばそうか。お互い」



わたしの頭をぽん、と撫でた。


……廉くんは、頭がいい。


言葉も、行動も、すべてがわたしに対する気遣いだ、とわかる。


わたしは、そんな廉くんに嘘をついてしまった罪悪感から、苦しくてたまらなくなった。







廉くんと、しばらく距離を置きたい。




そう思ったのは、色々と考えた結果だった。