5時からはじまる甘い罠。




固まるわたしに、廉くんはじっ、とわたしを見つめると、



「………なんて、嘘。

ごめん、俺なに言ってんだろ」



と表情を変えた。


そこにあるのは、いつもどおりの笑顔。


わたしは曖昧に頷くけど、その違和感は拭えないまま、残る。


廉くんの心は相変わらずわからない。


でもわたしなんかが知ったところで、どうせ何もできない。




廉くんの心に近づきたいと思うことすら、たぶんわたしには贅沢すぎる望みだ。




わたしはその後の授業中も、ひとりでずっと考えこんでいた。