近くにいたクラスの女子たちからかけられる声。みんなの笑い声が重なる。
そんなのいつものことなのに、なんだか今はすごく恥ずかしく思えた。
「……わらし?」
耳慣れない単語に、不思議そうに眉を潜めた目の前の彼の視線から、早く逃れたくて、
「あっ、ちょ……」
彼がなにか言いかけたのにもかかわらず、わたしは駆け出した。
にげるな。
……弱虫。
頭の中でもう1人のわたしがいっているのに、足が止まらないから仕方ない。
どうしよう。
真面目だけがとりえなわたしが、授業をボイコットするなんて……。
…いつも通りやり過ごせばよかったのに。
わたしは誰もいない校舎裏まで逃げて。
立ち止まって、ふと気づく。
……彼は他の人とは明らかに違った。
はじめてだった。
あんなにまっすぐに、わたしの存在を見つめる人は。

