「シィちゃん…シィちゃん!」

聞き覚えのない声が私を呼ぶ。しかも「シィちゃん」と言う呼び方は私が小学生の頃に呼ばれていたあだ名。一体…誰…?

私は真っ白な空間の中にいた。その中にぽつんとクマのぬいぐるみがある。普段私の部屋のベッドの上にいるはずの『くんちゃん』がここにいる。声の主はどうやらくんちゃんらしい。

「くんちゃん…?ここは…どこ…?」

疑問が溢れて止まらない。頭が混乱する。ここに来た経緯が全然思い出せない。

「ここは時空間。ボクはシィちゃんを過去に連れていくために魂を吹き込まれたんだ。」

「過去…?」

過去。そう言われて蘇る記憶は悪いことばかり。そんな過去になんて行きたくない。

「行きたくないって言いたそうな顔してるね。でもしかたないんだ。次に進むためには過去に1度戻ってここに帰ってくるしかないんだ」

「…分かった……頑張るよ…」

「よし、じゃあ行くよ…」

どくんとおおきく心臓が波打った途端視界がブラックアウトし、後ろに倒れる感覚がしたあと、意識は遠く彼方へとんでいった。