温かいこの場所で、君と

「海が近くにあるけど、魚をゆっくり見る機会はないでしょ?」

ミゲルはそう言い、夏羽を案内する。ミゲルは友達と一度来たことがあるらしい。

「綺麗な魚ね〜」

「熱帯魚はやっぱり綺麗だ!」

そんなことを話しながら、二人は久しぶりのデートを満喫する。水族館の微かな光に夏羽が着ている水色のワンピースが照らされた。

やがてお昼になり、ミゲルと手をつなぎながら夏羽はカフェテリアへと向かう。水族館には多くの家族連れなどで賑わっていた。

「Huwas umalis(離れないで)」

そう力強くミゲルは笑う。夏羽は「Oo(うん)」と頷き、人混みをかき分けていく。

ずっと歩き回り、お腹はぺこぺこだ。夏羽はお昼ごはんはフィリピン風焼きそばのパンシットにしようとかばんの中に手を入れる。

「えっ?あれ?」

夏羽の口から日本語が漏れる。かばんの中を探しても財布が見つからない。財布がかばんの中からなくなっていた。