「夏羽!夏羽!」

うなされていた夏羽は、恋人のミゲルの声に目を覚ます。頰に涙が伝っていた。

「Magandang umaga(おはよう)Okay ka lang ba?(大丈夫?)」

ミゲルがそっと夏羽の涙を拭う。その手はとても温かく、優しい。悪夢にうなされていた夏羽は少し安心した。

「Sige(大丈夫)Pasensya na(ごめんね)」

ニコリと微笑む夏羽を、「強がらないで!」とミゲルは強く抱きしめる。夏羽の体が震え、目からまた涙があふれた。

しばらく抱きしめあった後、二人は海に向かう。朝はこうして二人で海を散歩するのだ。

「また家族の夢を見たの?」

ミゲルが夏羽の白い手を握る。夏羽こくりと頷いた。

夏羽とミゲルは何度も公園で会い、お互いのことを話すうちに惹かれていった。ミゲルは日本に働きに来ていた。

二人は付き合うようになったのだが、夏羽の親はそれを許さなかった。ますます暴言はひどくなり、夏羽の心を蝕んでいく。