啓志郎くんが手に持っている婚姻届に、風が吹き付け、ガサガサと音を立てる。
「ごめんね…」
唇を噛みしめ、項垂れる。
「そんな顔をしないでくれ。笑ってくれないか?」
見上げたら、啓志郎くんは悲しげな瞳で、やんわりと笑みを浮かべた。
「私は、未礼の笑顔がとても好きだ」
「え…」ドキンと胸が高鳴り、緊張する。
「私は、未礼には、ずっと笑っていて欲しいのだ」
言ったあと、頬のわずかな微笑が消えた。
かすかに眉を寄せて、考えるようにゆっくりと目を閉じて、小さく息をついた。
それから目を開け、意を決したように、固く結ばれていた唇が静かに開いた。
「…そうだな。結婚は、未礼の言う通り、まだ早いのかも知れぬ」
慎重に丁寧に紡がれていく言葉に、集中して耳を傾ける。
「父にも言われたばかりだが、後継者となるには、まだまだ私には足りないものが多い。
今結婚をしても、今の私では未礼を幸せにできないだろう。
早く一人前になりたいと、急いていたが…。
物事には順序があるのだな」
苦々しくも、納得したような口調だった。
啓志郎くんは、思いを馳せるように、飛び立つ飛行機を眺めた。
風が、啓志郎くんの前髪を揺らす。
憂いのある横顔は、どこか吹っ切れたような、清々しさがあった。
「ごめんね…」
唇を噛みしめ、項垂れる。
「そんな顔をしないでくれ。笑ってくれないか?」
見上げたら、啓志郎くんは悲しげな瞳で、やんわりと笑みを浮かべた。
「私は、未礼の笑顔がとても好きだ」
「え…」ドキンと胸が高鳴り、緊張する。
「私は、未礼には、ずっと笑っていて欲しいのだ」
言ったあと、頬のわずかな微笑が消えた。
かすかに眉を寄せて、考えるようにゆっくりと目を閉じて、小さく息をついた。
それから目を開け、意を決したように、固く結ばれていた唇が静かに開いた。
「…そうだな。結婚は、未礼の言う通り、まだ早いのかも知れぬ」
慎重に丁寧に紡がれていく言葉に、集中して耳を傾ける。
「父にも言われたばかりだが、後継者となるには、まだまだ私には足りないものが多い。
今結婚をしても、今の私では未礼を幸せにできないだろう。
早く一人前になりたいと、急いていたが…。
物事には順序があるのだな」
苦々しくも、納得したような口調だった。
啓志郎くんは、思いを馳せるように、飛び立つ飛行機を眺めた。
風が、啓志郎くんの前髪を揺らす。
憂いのある横顔は、どこか吹っ切れたような、清々しさがあった。

