黙ったまま、啓志郎くんは封筒の中の紙を取り出す。
一週間前にもらっていた婚姻届だ。
折られた婚姻届が開かれたタイミングで、あたしは頭を下げた。
「ごめんね、あたし、これにサインできない」
下を向くあたしの耳に、飛行機の離着陸の音が響く。
少しの沈黙のあと、低い静かな声がかけられた。
「頭を上げてくれ」
おずおず顔を持ち上げ、ちらりと啓志郎くんの顔をうかがう。
目が合うと、啓志郎くんの顔が曇る。
その目に複雑な影が走った。
「…他に良い相手がいるのか?」
「それは、いない!」
「ならば…何故だ?」
申し訳なくて、居たたまれずに視線を逸らした。
こんなあたしでいいって言ってくれてるのに…。
「上手く言えないんだけど…。
啓志郎くんのことが嫌だってことじゃなくて。
結婚して欲しいって言ってくれたの、すごく嬉しいんだけど。
啓志郎くんがもっと、いい加減な人間だったら、ここまで迷わず受けたかもしれないけど、そうじゃないから…。
だから、今のあたしのままじゃ、無理。
あたしにも、自信がいるの」
驕らず努力し続ける御曹司と、並んで歩くには。
今のままでは、求められても結婚なんて無理。
勇気を出し、切り返すように顔を上げて、じっとあたしの言葉を待つ啓志郎くんと視線を合わせた。
「あたしにはまだ、啓志郎くんの横に立つ覚悟ができない」
一週間前にもらっていた婚姻届だ。
折られた婚姻届が開かれたタイミングで、あたしは頭を下げた。
「ごめんね、あたし、これにサインできない」
下を向くあたしの耳に、飛行機の離着陸の音が響く。
少しの沈黙のあと、低い静かな声がかけられた。
「頭を上げてくれ」
おずおず顔を持ち上げ、ちらりと啓志郎くんの顔をうかがう。
目が合うと、啓志郎くんの顔が曇る。
その目に複雑な影が走った。
「…他に良い相手がいるのか?」
「それは、いない!」
「ならば…何故だ?」
申し訳なくて、居たたまれずに視線を逸らした。
こんなあたしでいいって言ってくれてるのに…。
「上手く言えないんだけど…。
啓志郎くんのことが嫌だってことじゃなくて。
結婚して欲しいって言ってくれたの、すごく嬉しいんだけど。
啓志郎くんがもっと、いい加減な人間だったら、ここまで迷わず受けたかもしれないけど、そうじゃないから…。
だから、今のあたしのままじゃ、無理。
あたしにも、自信がいるの」
驕らず努力し続ける御曹司と、並んで歩くには。
今のままでは、求められても結婚なんて無理。
勇気を出し、切り返すように顔を上げて、じっとあたしの言葉を待つ啓志郎くんと視線を合わせた。
「あたしにはまだ、啓志郎くんの横に立つ覚悟ができない」

