我妻教育3

始め、意味がわからなかった。

ぽかんとしたまま、啓志郎くんを見たら、うっすらと、耳が赤くなっている。

今、笑顔が出るのは
今、あたしがいるから

照れてる?

「啓志郎くん、照れてるの?
可愛いーー!見たい!見せてテレ顔!」

「茶化すのは、よしてくれ」
顔を見られまいと背けたまま、手でガードする。
恥ずかしそうにしてる。らしくない反応。

やだ、もう。
あたしにも、照れが移って顔が熱くなる。

いつも堂々として賢くて隙がない啓志郎くんが、一緒にいると色んな顔を見せてくれる。

あたしに向けられる言葉や行為から、もう、分かっている。

義理や刷り込みだけじゃない。愛や恋に近いかもしれない。
確かな好意が宿っていることに。

この先を期待してしまうけど……

言わなければ、いけないことがある。

切なさと、熱く胸に込み上げてくるものを必死で抑えた。


食事を終えて、まだ搭乗時間まで余裕があったから、展望デッキの柵の前に移動した。
ちょうど日陰。でもやっぱ暑いな。

並んで眺める。
滑走路に面していて、飛び上がる飛行機が目の前で見えた。

あたしは密かに一つ深呼吸した。
「あのね、あたし、啓志郎くんに話があるんだけど…」

改まって話をふったあたしに、「ああ」と、啓志郎くんは神妙な面持ちで向き合った。

あたしは持っていたカバンから、一枚の封筒を取り出し、啓志郎くんに渡した。