我妻教育3

亀集院さんは、思わせぶりに、ゆっくりと微笑みながら言った。
「ハイヤーを呼ぶよ。
そこからどうしようか?
家まで送ろうか?
それとも、まだ一緒にいてくれる?
未礼ちゃんが選んでいいよ」

「え、っと…それは……」
このあともまだ一緒に…って…。それって、つまり…そういうこと?
そんなの、すぐ“帰る”でしょ。

でも、、、
啓志郎くんと会わないようにする口実には、ちょうどいいかもしれない……

そんな考えが頭をよぎって、すぐに拒むことができずに沈黙する。

「黙っていたら、俺が決めるよ」

亀集院さんはそう言って、あたしの腰を引き寄せた。

見上げたら、核心的なキスの角度。

背景は、ロマンチックな光に溢れている。

そうだ、ちょうどいい。

なら、このまま流されても……ーーそう思ったときだった。


「未礼!」

怒鳴るような大声で名前を呼ばれて、驚いて、弾かれるように亀集院さんから身を離した。

「け、啓志郎くん!?」

「…ッ…探したぞ…!」
啓志郎くんが、ケヤキ並木を背景に、膝に手を付いて、肩で大きく息をしている。

「なんで?!」
ここにいるの?!
あまりにビックリして、心臓がバクバクする。