我妻教育3

亀集院さんは、笑いながら「そう」と言ってから、少し真顔であたしの目を見た。
「俺にとっては、君が魅力的だっていう理由だけでいい。
誰からの反対もなく、俺は君を恋人にできる」

余裕たっぷりの表情だ。
「…っ、…」口を開いても、返す言葉が出てこない。

すごい口説き文句…。
思わず他人事のように感心してしまう。

亀集院さんは超良い男で、女の扱いが超上手い。
だからこそ絶対女ったらしで、あたしのことも遊びに決まってる。

いくら素敵でも、恋愛対象としては考えられない。

なのに、このまま押し切られそうで、ちょっと焦って視線が泳ぐ。
「…でも、まだ、一回食事に来ただけですよ…」

「良いと思うのは、回数の問題じゃないよ」

「…でも…」

「悩んでるってことは、脈なしって訳でもなさそうだね」
見透かしたような口調で言う。

何も言葉を返せないまま、しばらくして立ち上がり、光の中を再び歩き出した。

チカチカして目がくらみそうになりながらも、こらえて歩く。

ようやく、ケヤキ並木のイルミネーションが途切れる先に、大通りが見えた。

プロムナードって、こんなに長かったっけ。
気持ちの問題かもしれないけど、ずいぶん時間がかかったような気がした。

プロムナードの終盤で、亀集院さんが立ち止まって、あたしの方に体を向けた。