我妻教育3

『未礼のせいではない。列車が止まったのは台風の影響だ』

思った通りの啓志郎くんの台詞。
絶対に、何も問題ない、あたしのせいじゃない、って言う。頑なに。

「…そうかもしれないけど、そういうことじゃなくて、予定があるってわかってたら、初めから来てとか言わなかったのにって…」

『それでも行くと選択したのは私だ』

「それでも…」

『未礼、遅い時間ではあるが、直接会って話せないか?今、どこにいる?』

会う?

“今後一切、会わないこと”
また頭を過ぎる。

「…えっと、ごめん、今、人と会ってて」

どうしよう。
まだ考えも纏まっていないのに…。

『…誰とだ?』

「啓志郎くんには、関係ない人だよ」

『今、どこにいるんだ?』
強めの口調に、どうにもこうにも後ろめたい気持ちになった。

無理だよ、どうしろっていうの。
追い詰めないでよ。
考えろ、考えろって、あちこちから急かされて……疲れた。

『未礼?』

「…っ、今、デート中だから!」
思わず口走った。

『デートだと?』

啓志郎くんの怪訝そうな声に、怯んでしまいそうになりつつも、言ってしまってこっちももう引けなくなった。

「うん、だから、啓志郎くん。もう、あたしに関わらないで」

ごめんね……

強引に電話を切って、「はーーっ」と息をついて脱力。

これでいいの…かな?