我妻教育3

レストランを出て、10分くらいハイヤーに乗って、次に向かったのはバーだ。

港近くの隠れ家っぽいバー。

薄暗く落ち着いていてシックな空間。
重厚な木製のバーカウンターに並んで座る。

さすが雰囲気イイところ知ってるなぁ~。

本格的な三角のカクテルグラスで飲むカクテルは、大人なバーの雰囲気も相まって一層美味しく感じるんだよね。

ーーなんて、バーの雰囲気に浸って、油断していた。

ふと、手の甲に温もりを感じた。
隣に座る亀集院さんの手が、あたしの手に重ねられていた。

驚いて顔を向けたら、亀集院さんと目が合う。
キリッと力のある目元。
意味深に無言のまま、その目が真っ直ぐにあたしの目を見つめる。

何、突然、この空気…!!

身構えるあたしの耳に、ささやくような低い声が通る。

「未礼ちゃん、また会ってもらえるかな?」
言いながら、重ねた指先を絡めて手を握ってきた。

「…え、っと、あの……」
カアッと頬が熱くなる。

「会ってもらえる?」
語尾に甘い響き。

繋いだ手に力を込められて、心臓が跳ねる。
やばい、ドキドキする!?

「し、翔太さん、酔ってます?!」
うろたえて声が裏返りそうになる。落ち着けあたし!

「酔ってないよ」

「翔太さん、モテるでしょう?他にも女の人たくさんいそう…」