我妻教育3

その力がキンポウゲにはある。

マイラ姫を悪く思っちゃいけないって、思ったけど無理だ。

さすがのあたしでも、こんなの気づく。

このマネージャーの後ろにいるマイラ姫は、啓志郎くんからあたしを遠ざける為に、あたしを追い込もうとしてるんだって。
酷い。

「マイラさんは、そこまでして、あたしを啓志郎くんから引き離そうとするんですか。
啓志郎くんは、このこと知ってるんですか?」

無表情だったマネージャーの頬がピクリと動いた。
「啓志郎様はご関係ありません」

「それでも、会う会わないは啓志郎くんにも関係あることなので、啓志郎くんに相談してみます」
あえて強気にそう言ってみる。

マネージャーは苛立ったのかパンッとタウン誌を閉じた。
そしてまた、作り笑いを浮かべてあたしを見た。
「私どもは貴女の才能も買ってるんですよ。
貴女が“黙って”条件を飲んで頂けるのであれば、キンポウゲ5分クッキングへの出演と、一皿飯の出版もお約束致しましょう」

キンポウゲ食品の一社提供による長寿料理番組だ。
週5日、朝の10時の5分間。

出演することは、料理研究家として名誉だ。
知名度抜群。
さらに本の出版までって……

「さあ、これで貴女もお望み通り有名料理研究家の仲間入りです。
貴女にとって、これほど良いお話はないでしょう?
それとも、ご自身が啓志郎様と釣り合うとお思いですか?」