我妻教育3

「偶然ですが、弊社のキンポウゲ食品が、こちらのタウン誌に広告を出させて頂いてましてね。
その関係で、貴女が今日ここへいらしていることを知りまして」

ーー知ってる。
金峰下グループが一番大きな広告を出していること。
こんなの嫌な予感しかしないじゃん。

マネージャーは、あたしのレシピのページ開いて、寒気がする程あからさまな営業スマイルをした。

「貴女の連載の≪一皿飯≫良いですね。
タウン誌ではなく、全国版の雑誌に掲載されたくないですか?
お力添え出来ますよ」

「え?」

「それには、一つ条件があります。
松園寺啓志郎様と今後一切お会いにならないこと。
その契約書にサインをして頂きます」


「----は?」

啓志郎くんと会わないこと?サインしろって、唐突に何?

「あたしの仕事と啓志郎くんと、どう関係があるっていうんですか?」

「そのご質問にはお答えできません」

「マイラさんの望みってことですか?」

「お答えするつもりはございません」

取り合うつもりなし、営業スマイルは消え、いつもの冷淡な表情で「さて、どうされますか?」と追い詰めてくる。

「…あたしを脅しているんですか?」

「何を人聞きの悪い。
ただ、料理研究家なんて山ほどいますから、こちらの雑誌側も貴女である必要もないでしょうね」

ゾッとした。YESと言わなければ、雑誌からあたしを外すってことだ。