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嵐は、明け方には過ぎ去った。

早朝の眩しい青空。台風一過。
寝ぼけ眼で窓を開けると、外から声が聞こえる。

台風が過ぎ去った後の片付けをしているようだ。
ヤバイ、あたしも手伝わなきゃ。

急いで外に出てみると、啓志郎くんと勇の背中が見えた。

二人とも高校生。少し前まで小さかったのに、立派にあたしなんて追い越した。
体つきもほぼ大人。

蔵の辺り一面に散乱したゴミや落ち葉を片付けながら、二人は会話をしている。

「…家のことですよね。
改装されて、その後レストランになるそうです」

先に聞こえたのは勇の声。
続いて啓志郎くん。

「ああ、聞いた。気になっていたのだ。
どうして私の申し出を拒んだのか。
売ってしまって良かったのか?」

家の話だ。売ったあたしの実家。
申し出って何の話?

あたしの知らない話をしている。
思わず物陰に隠れて二人の会話を盗み聞きした。

「申し出には感謝しています。
ですが、失脚した父にとって、あの家は大きな負担にしかならない。
援助で取り戻したとしても、不相応で手に負えません。
僕らは、一から出直すしかないんです」

援助?!ってどういうこと?

「とはいえ、思い出の詰まった大切な家だったのだろう?」