我妻教育3

「未礼はここに来るの初めてだけど、僕は何回か来たことがあったんだ。
十数年前のことだけど。未礼のお母さんと一緒にね」

「そうなの?知らなかった」
お母さんと来たことあったんだ。

「その縁もあって今回こうしてお世話になってる」

「今までしてた仕事とは、全く違うことでしょ?迷いはなかったの?」

「迷ってる場合じゃなかったしね」と義父は首をすくねて、困ったような顔で笑った。

「妻と琉生は、妻の実家に帰ってしまった。
妻は社長でなくなった僕に興味を持ってない。離婚も時間の問題だろうね。
自分の近しい親族は、社長じゃなくなった自分から離れて行ったよ。友人、知人も。
救いの手を差しのべてくれたここで精一杯恩返しをしたいんだ」

「そっか…。
あ、仕事戻っていいよ」

ショップにお客さんが入ってきた。

「ああ。未礼はゆっくりしていってくれ。
うちの鍵渡しておくから、好きに休憩しててくれてもいいよ」

「ありがとう。町並み雰囲気あるから、ちょっとブラブラしてみる」

「いいと思うよ。古民家をリノベーションした雑貨屋さんとか、カフェとかもあるし」

「うん。行ってみる。仕事頑張って」

「ありがとう!」

お客さん相手に元気よく明るく接客している義父。ハッピが様になってる。

山指さんご夫婦も良い人だし、ここで上手くやれてるみたいで、安心した。