チヨさんは、啓志郎くんの実家の住み込みの家政婦をしていた人。

だから、あたしもお世話になっていた人。

今は家政婦を引退して、娘さん家族と一緒に暮らしていた。

啓志郎くんからチヨさんの入院と、帰国してお見舞いに行くっていう連絡もらったから、あたしも便乗したんだ。


「チヨ、具合はどうだ?」
啓志郎くんは、すぐにチヨさんの側に寄り添う。

「見ての通り元気です。ただの年ですよ。お恥ずかしい。
大部屋で構いませんのに、こんな立派な個室に入れて頂いて恐縮です」

少し痩せたかな?

点滴が痛々しいチヨさんを労るように手を握り、目を見つめて啓志郎くんは微笑む。

「無理をせず、ゆっくり養生すると良い」

チヨさんとは、生まれたときから小学校を卒業するまで、一緒に暮らしていたんだもんね。

本当は帰国する予定なかったのに、見舞う為に急いで帰国するくらい心配していた。


「啓志郎お坊っちゃま。心配しないで下さい。チヨは大丈夫ですから」

チヨさんは、小さな子をなだめるような手つきで啓志郎くんの腕をさすった。