「エプロン姿の啓志郎くんって新鮮だね」

こそっと声をかけると、啓志郎くんは目を細めてちょっと考えた。

「そうか?そう言えば、そうだな。
未礼のエプロン姿は良く見ていたが、私が着用したことなかったな」

「あ、ねぇねぇ!先生、てんぷら粉どれぐらい混ぜたらいいのかな?」
マイラ姫から質問が飛んできた。

料理慣れてないのかな?一生懸命な手つきが可愛らしい。

「衣は混ぜ過ぎない方がいいので、軽く混ぜて少しダマが残るくらいで大丈夫です」

「はぁーい。啓志郎さま、これぐらいだって」
キラキラした笑顔。

マイラ姫も楽しんでくれてそうで良かった。

「先生、ちょっと!」
啓志郎くんの隣の調理台から声がかかった。

「はい」
啓志郎くんたちに断りを入れて、隣の受講者さんのところへ体を向ける。

「揚げ方なんだけど…こう?」

「はい。衣に食材をくぐらせて、…そうです、静かに滑らせるように油に入れて下さい」

受講者さんと一緒に揚げ方を確認する。

そうやって、隣の調理台に意識を向けていた少しの間だった。


バチッという油がはねた音と「きゃああ!熱ッ!!」女の子の悲鳴。
「マイラ大丈夫か?!」啓志郎くんの驚いた声。