我妻教育3

その仕草がスマートで大人っぽくて、この人は将来、仕事でも何でもデキる最高に良い男になるんだろうと、確信した。


ニューヨークへ戻ってしまう。

別れ際。
しんみりして、半歩後ろにいたあたしに、啓志郎くんが振り返った。

いつもの凛とした表情だ。
「では、また連絡する」

コクンと頷き、「寂しくなるなぁ…」と呟いた。

「…そうだな」
啓志郎くんのしなやかな手が、あたしの髪を撫でた。

近づく距離。

ハグだ…って、期待した。
前回の別れ際もしてくれたし。

予想通り、フワリと抱き寄せられて、あたしも背中に手をまわす。

昨夜とは違う、柔らかな温もり。

それから、少し離れて、近づいたのは右の頬。

頬をすり寄せる、お別れのチークキス。

くすぐるような甘い頬の感触に、思わずフフっと笑う。
「アメリカで、こんな挨拶まで覚えてきたの」

「…まあな」

啓志郎くんが恥ずかしそうに身を離すから、もう一度、今度はあたしからギューっと強めのハグをした。

「啓志郎くん、気をつけて。元気でね」

「ああ、未礼も」

温もりが、離れて行く。

「うん。啓志郎くん、行ってらっしゃい」
ニコッと元気に笑って手を降る。

「行ってきます」
啓志郎くんは柔らかに微笑んだ。

涙が出そうだった。