私の手を優しく取り、ワトソン先生は椅子に座らせる。そして救急箱を取り出し、消毒薬などを取り出した。

「ちょっとしみるよ」

ワトソン先生はそう言い、手当てを始める。テキパキと包帯が巻かれた。

「ありがとうございます」

私は申し訳なさを感じながら、お礼を言う。ワトソン先生は私の頭をそっと撫でた。

「気にしなくていいよ。りんごは僕が切るから和香はここにいてね」

頰をほんのり赤く染め、ワトソン先生はキッチンへと歩いて行った。

私はワトソン先生の言うことを聞いて、椅子に座って窓の外を見続ける。外は今にも雨が降ってきそうな曇り空だ。

「和香が怪我をしているということは、朝食にりんごが出るんだな」

急に聞こえてきた声に、私は視線を窓の外から目の前に向ける。

百八十センチほどの長身、緑の目に黒い髪。整った顔立ちの男性が私を見つめている。彼が名探偵の子孫だ。彼自身も探偵をしている。彼は、先祖の名前をそのまま受け継いだ。