イギリス、ロンドン。この街にはあの名探偵の子孫がいる。

私は胡桃沢和香(くるみざわわか)。ベイカー街にあるこの家に住んでいて、仕事は看護師をしている。

今日は私の仕事は休みだ。しかし、私の朝は早い。同居人の朝ごはんを作らなければならないから。

黒のリボンワンピースに着替え、キッチンに立つ。三人分の朝ごはんを作らなければならない。

紅茶は二人の好きなダージリンを淹れよう。トーストを焼いて、目玉焼きを作る。サラダやフルーツを用意すれば立派な朝ごはんだ。

調理を始めて三十分もしないうちに、同居人の一人が起きてきた。深い茶色の瞳と髪。身長は百七十センチほどで、可愛らしい顔立ちの男性。

「ワトソン先生、おはようございます!」

「おはよう、和香」

ジョン・H・ワトソン先生は、私が働く診療所のお医者さんだ。優しく穏やかな性格で、多くの患者から慕われている。

私は三年前、一人暮らしをしていたマンションが放火され家を失ってしまった。そんな時にワトソン先生が「一緒に暮らさない?」と言ってくれたのだ。