「今年はチョコ作りに命をかけないとね」


「私、チョコを作るのは初めてなんです」


「へえ、羽鳥ちゃん、人生初のチョコ作りか。しかも、本命。こりゃ、失敗出来ないね」


「そう言われるとものすごくプレッシャーなのですが...」



藤宮さんと園田さんは本命チョコ作りに燃えていた。


一方でわたしは...。



「ことちゃんは誰かにチョコあげるの?友チョコなら、大歓迎だよ!」


「もちろん、友チョコ大量に作りますよ。食べたくなくなるくらいたっぷり作りますから」


「そりゃ嬉しい話だわ。んで、本命は?ことちゃん、好きな人いないの?」



わたしはどう答えるべきかものすごく悩んだ。


気付いたらずっと心にある、このふわふわとした淡い気持ちをどう表現したら良いのか分からない。


これは恋なのか。


これこそが恋なのか。


それさえもはっきりしない。



「ことちゃん」


「はい...」



園田さんがわたしの心の奥を見つめるような眼差しを向けた。



「波琉の分は別に作ったら?」


「えっ...」


「ことちゃん、波琉のこと好きでしょ?」



園田さんに言い切られ、考える余地が無くなった。


わたしは...


わたしは...


青柳くんが...


好き、


なんだ。


やっぱり、そうなんだ。


他人から見てそうなら、きっとそうなんだ。



「園田さん...わたし、どうしたらいいでしょうか?」


「ただ渡すだけでいいんじゃない?あとどうするかは波琉次第なんだし。やれるだけやってみようよ」



がんばってみるか。


人生初の本命チョコ作りを。


もちろん、友チョコもお父さんへのチョコも手抜きしないけど。



「はい、がんばります!」


「そうこなくっちゃ!」



2人で盛り上がっていると、藤宮さんが



「あの...。青柳くんとはもしかしてミスターコンテストに出られていた方ですか?」



と聞いて来た。



「ああ、そうそう。青柳波琉はあたしと朱比香の幼なじみ」


「そうなんですね。まさか畠山さんとも繋がりがあったとは知りませんでした」


「あんなことがあってからは全く会ってないけどね。ああ、そういえば、あの子、波琉のことずっと大好きだからまた今年もチョコあげるかもね。朱比香よりは美味しいのを作らないと幻滅しちゃうわ」


「わたし、青柳くんのお口に合う、とびきり美味しいチョコを作ります!」



と、わたしが宣言したところで昼休み終了のチャイムがなった。



「じゃあ、話の続きは放課後に」