百合野に連れ出され、やって来たのは一度も利用したことのない食堂だった。


全面ガラス張りで中庭を見ながら食事することが出来るのでかなり人気だ。


ほとんど空きはなくて、オレたちは配膳スペースから1番遠いところに座った。


隣では金髪カップルがイチャイチャしながら食事している。


こんな奴らの隣って、ついてねえな。



「ちょっと波琉!あたしの目を見なさい」


「はいはい、すみません...」



隣の奴らがこっちを見てくる。



「怒られてる、怒られてるう」


「はっはっは、なっさけなーい!」



ああ、もう最悪だ。


早くこの場からいなくなりたい。


なんなら今すぐ消え去りたい。



「すみませんが、見ないでもらえます?ちなみにコイツはあたしの幼なじみで、カレシは別にいるんで。白鷺未悠っていう、超絶可愛くてカッコいい子なんですぅ」



と百合野が奴らに言ってのけた。


金髪カップルはブスくれながら黙って食事をし始めた。


さすが、園田百合野だ。



「では、真剣なお話をいたしましょう。明日はなんの日かご存じ?」


「星名の誕生日だろ?そのことでちょっと相談があってさっきも電話したんだけど」


「知ってはいたんだ。でもプレゼントはまだだと」



オレはうんうん頷いた。



「あたしにはくれないのに、ことちゃんにはあげたいと、そういうことでよろしい?」


「別にそんなんじゃ...。今年からやるから」


「いらん。未悠からもらうから」


「そうだよな...。今までごめん」


「あたしのことはいいから、ことちゃんのこと考えなよ」



まあ、そうなんだが。



「さっぱり分かんないんだよ。だからアドバイスくれ。頼む」



幼なじみに頭を下げるのもシャクだが、仕方ない。


百合野がいなかったらオレは無能だ。


胸キュンセリフも練習してやっとものにしたようなヤツだから、そもそも恋愛偏差値低いからな。


助けてもらわないとダメなんだよ。



「じゃあ、1つ質問。青柳波琉、あなたは星名湖杜が好きですか?」


「は?」


「ごまかさないで、きちんと答えて。友だちとしてではなく、1人の女性として好きなのかを」



1人の女性として...。


確かに最近のオレは変だ。


星名の色んな仕草にドキドキするし、星名のことを考える時間が長くなったように感じる。


あの日だって、会いたくて疲れてるのにも関わらず会いに行った。


自分から抱きしめた。


過去を受け入れた。


星名の笑顔をもっとみたいと思った。


星名を笑顔にしたいと思った。



つまり、オレは...


オレは、


星名が...


星名湖杜が...



「好き、なんだ」