姉が泣きながら寝室から飛び出してきて、父と母を交互に殴っていた。
「お父さんのバカ!お母さんのバカ!」
2人の喧嘩は終わった。
そして...。
「あなたとは価値観が合わないわ。これ、書いてちょうだい」
母は紙切れを出した。
ドラマ撮影で度々目にしていたから、この1枚でわたしたち家族の縁が簡単に切れてしまうのだと分かっていた。
「ああ」
父がペンを持ってスラスラと諸事項を書いた。
乱暴に渡した紙を見つめてから、母は吐き捨てるようにこう言った。
「あなたたちは終わりね」
母はパジャマ姿の姉の手を引いた。
「美湖の親権は私が持ちます」
「湖杜は?」
「湖杜はあなたが育てればいいじゃない?」
「2人は一緒じゃないと可哀想だ。産まれた時から一緒だったんだぞ」
わたしは母を見つめた。
母もわたしを見る。
わたしも一緒に...。
「この子には才能がない。だから、いらないわ」
母はお気に入りのバッグに貴重品を入れ、スーツケースに入りきる分だけの服を入れた。
姉の手をしっかり握り、玄関の戸を開ける。
「さよなら」
という母の氷のように冷たい言葉と
「こと、行ってきます」
という姉の純粋な声がわたしの心の中で複雑に混じり合った。
姉はただ単に出かけるだけだと思ってたのだろう。
2度と戻っては来ないのに...。
大好きだったうさぎのぬいぐるみも、"あやちゃん"と名付けたお人形も、好きだったワンピースも、ピンクのスニーカーも全て置いて出ていった。
お父さんがしゃがみこみ、わたしを抱き締めた。
「湖杜、ごめんな。本当にごめんな...」
お父さん、泣かないで。
わたし、お父さんと居られて幸せだから。
お父さんだけはわたしの味方になってくれてすごく嬉しかったから。
そんなことを思いながら、号泣している父の頭を撫でてあげていたのだった。
「お父さんのバカ!お母さんのバカ!」
2人の喧嘩は終わった。
そして...。
「あなたとは価値観が合わないわ。これ、書いてちょうだい」
母は紙切れを出した。
ドラマ撮影で度々目にしていたから、この1枚でわたしたち家族の縁が簡単に切れてしまうのだと分かっていた。
「ああ」
父がペンを持ってスラスラと諸事項を書いた。
乱暴に渡した紙を見つめてから、母は吐き捨てるようにこう言った。
「あなたたちは終わりね」
母はパジャマ姿の姉の手を引いた。
「美湖の親権は私が持ちます」
「湖杜は?」
「湖杜はあなたが育てればいいじゃない?」
「2人は一緒じゃないと可哀想だ。産まれた時から一緒だったんだぞ」
わたしは母を見つめた。
母もわたしを見る。
わたしも一緒に...。
「この子には才能がない。だから、いらないわ」
母はお気に入りのバッグに貴重品を入れ、スーツケースに入りきる分だけの服を入れた。
姉の手をしっかり握り、玄関の戸を開ける。
「さよなら」
という母の氷のように冷たい言葉と
「こと、行ってきます」
という姉の純粋な声がわたしの心の中で複雑に混じり合った。
姉はただ単に出かけるだけだと思ってたのだろう。
2度と戻っては来ないのに...。
大好きだったうさぎのぬいぐるみも、"あやちゃん"と名付けたお人形も、好きだったワンピースも、ピンクのスニーカーも全て置いて出ていった。
お父さんがしゃがみこみ、わたしを抱き締めた。
「湖杜、ごめんな。本当にごめんな...」
お父さん、泣かないで。
わたし、お父さんと居られて幸せだから。
お父さんだけはわたしの味方になってくれてすごく嬉しかったから。
そんなことを思いながら、号泣している父の頭を撫でてあげていたのだった。



