その後、わたしたちは歌うことは無く、食べては話すを繰り返した。
今までは、一般的な高校生にあったものがわたしにはなかった。
それが辛いと言えば辛かったけれど、一生関係ないことなんだなと思えば諦めもついた。
でも、今は違う。
楽しいことを待っているだけで掴みにいかなかった過去の自分に後悔しているし、これからも楽しむことを諦めたくない。
こうやって笑い合える幸せを手放したくない。
わたしが幸せを分けてあげたい。
勝手ながらそう強く思うんだ。
「そういやさ、ことちゃん」
「はい、なんでしょう」
「初詣も一緒に行かない?未悠もいるけど」
「もちろんご一緒させて下さい。でも、藤宮さんは?」
「羽鳥ちゃんは、ねえ...」
出ました、園田さんのニヤニヤ顔!
ということは、何か企んでいる?
「わ...わ...私は...、その...えっと...」
藤宮さんがパニックになっていると、園田さんがすかさず助け船を出した。
「森下先輩を誘うんだよね?」
「は...はい。来年はちょっと頑張ってみようかと。先輩も卒業されますし...。1月、2月は正念場なんです」
それを聞いて喜びたいけど素直に喜べない自分がいる。
きっと今日だって桐生さんは藤宮さんを誘いたかっただろうし、初詣も一緒に行きたいだろう。
なんか...切ない。
「ことちゃん、どうかした?」
園田さんは鋭い。
いつだってわたしの異変を素早くキャッチする。
でも今回はその理由を話すことは出来ない。
言ってしまったら藤宮さんが脱走しかねないから。
わたしが黙ってしまうと、口を切ったのは、まさかの藤宮さんだった。
「星名さんは優しいですね」
「彼のことを心配して下さっているんですよね」
分かってたのか。
そりゃ、分かるか。
わたし、感情がすぐに顔に出ちゃうから。
ぜんっぜん、隠せないから。
「桐生くんのこと?」
わたしはこっくりと頷く。
「彼、いつまでも私から卒業してくださらないんです。高校生だというのにいつまでも一緒に居たがるんです。彼には何度も告白されて何度も断ってきました。それなのに、まだ諦めてくださらないから、私も...辛いんです」
「辛い?」
「彼の気持ちに答えてあげられないのが、辛いんです」
「羽鳥ちゃん、罪悪感なんて抱く必要無いよ。だって、桐生くんとは幼なじみ以上でも以下でもないんだから」
そんなものなのか、幼なじみって。
同じ時間を誰よりも長く共有して来たはずなのに、ぱっと縁を切られちゃう。
そういうことを切ないなんて、悲しいなんておもってはいけない。
それってやっぱり、辛い。
少なくともわたしは耐えられない。
「恋には犠牲も伴う。今の関係を諦めたとしても掴み取りたいと思わなければ、それはきっと中途半端な恋だよ」
園田さんは手厳しい。
でも、それが園田さんの優しさでもある。
「宙ぶらりんな気持ちでいたら、森下先輩のことも桐生くんのことも傷付ける。だから、羽鳥ちゃん」
園田さんが藤宮さんの手を握る。
大丈夫だよ。
そう言っているように見えた。
「どうなるかは分からないけど、森下先輩と付き合うことになったら...桐生くんを捨てて。彼は羽鳥ちゃんの何者でもないんだから」
今までは、一般的な高校生にあったものがわたしにはなかった。
それが辛いと言えば辛かったけれど、一生関係ないことなんだなと思えば諦めもついた。
でも、今は違う。
楽しいことを待っているだけで掴みにいかなかった過去の自分に後悔しているし、これからも楽しむことを諦めたくない。
こうやって笑い合える幸せを手放したくない。
わたしが幸せを分けてあげたい。
勝手ながらそう強く思うんだ。
「そういやさ、ことちゃん」
「はい、なんでしょう」
「初詣も一緒に行かない?未悠もいるけど」
「もちろんご一緒させて下さい。でも、藤宮さんは?」
「羽鳥ちゃんは、ねえ...」
出ました、園田さんのニヤニヤ顔!
ということは、何か企んでいる?
「わ...わ...私は...、その...えっと...」
藤宮さんがパニックになっていると、園田さんがすかさず助け船を出した。
「森下先輩を誘うんだよね?」
「は...はい。来年はちょっと頑張ってみようかと。先輩も卒業されますし...。1月、2月は正念場なんです」
それを聞いて喜びたいけど素直に喜べない自分がいる。
きっと今日だって桐生さんは藤宮さんを誘いたかっただろうし、初詣も一緒に行きたいだろう。
なんか...切ない。
「ことちゃん、どうかした?」
園田さんは鋭い。
いつだってわたしの異変を素早くキャッチする。
でも今回はその理由を話すことは出来ない。
言ってしまったら藤宮さんが脱走しかねないから。
わたしが黙ってしまうと、口を切ったのは、まさかの藤宮さんだった。
「星名さんは優しいですね」
「彼のことを心配して下さっているんですよね」
分かってたのか。
そりゃ、分かるか。
わたし、感情がすぐに顔に出ちゃうから。
ぜんっぜん、隠せないから。
「桐生くんのこと?」
わたしはこっくりと頷く。
「彼、いつまでも私から卒業してくださらないんです。高校生だというのにいつまでも一緒に居たがるんです。彼には何度も告白されて何度も断ってきました。それなのに、まだ諦めてくださらないから、私も...辛いんです」
「辛い?」
「彼の気持ちに答えてあげられないのが、辛いんです」
「羽鳥ちゃん、罪悪感なんて抱く必要無いよ。だって、桐生くんとは幼なじみ以上でも以下でもないんだから」
そんなものなのか、幼なじみって。
同じ時間を誰よりも長く共有して来たはずなのに、ぱっと縁を切られちゃう。
そういうことを切ないなんて、悲しいなんておもってはいけない。
それってやっぱり、辛い。
少なくともわたしは耐えられない。
「恋には犠牲も伴う。今の関係を諦めたとしても掴み取りたいと思わなければ、それはきっと中途半端な恋だよ」
園田さんは手厳しい。
でも、それが園田さんの優しさでもある。
「宙ぶらりんな気持ちでいたら、森下先輩のことも桐生くんのことも傷付ける。だから、羽鳥ちゃん」
園田さんが藤宮さんの手を握る。
大丈夫だよ。
そう言っているように見えた。
「どうなるかは分からないけど、森下先輩と付き合うことになったら...桐生くんを捨てて。彼は羽鳥ちゃんの何者でもないんだから」



