嵐を呼ぶ噂の学園④ 真冬でもあったかいのは愛です!編

その後も歌い続け、午後2時になった。


プロじゃないので喉はがらがら。


お腹もぺっこぺこになって一旦休むことにした。



「やっぱりクリスマスって言ったら丸鶏でしょ!」



園田さんは毎年家族で食べているという丸鶏を注文し、解体作業に取りかかっている。


カラオケ屋さんに丸鶏があるなんて知らなかった。


あまりにもグロテスク過ぎて藤宮さんは目を背けている。


アメリカでは七面鳥を食べるんだよね。


どんな味するんだろう。


と、わたしは呑気に七面鳥に思いを馳せていた。



「よし!解体完了!さあて、食べようじゃないか!」



到着していた飲み物をそれぞれ持つ。



「じゃあ、乾杯の音頭はことちゃん、お願い致します」


「わたしですか?」


「そう。ことちゃんはあなたしかいないよ」



わたしはこういうのがとことん苦手だ。


そんなわたしがミスコンに出られたなんて奇跡中の奇跡だと思う。


あの時は他の恐怖の方が強かったから、人前に立っても平然としていられたのかもしれない。


ふう...と深呼吸をひとつしてわたしは言った。



「今年もお疲れ様でした」


「ことちゃん、それ大晦日に言うことだよ!」



あららら。


やばやばです。


なんというミス。


今年はあと数日残っている。



「大変失礼致しました!気を取り直して、乾杯!」


「乾杯!」



グラスを打ち合う快い音が響く。


今年は友だちと一緒に居られて良かったと改めて思う。



「苦労した甲斐があったわー。チキン、めっちゃ旨い!」



いつになく食い意地を張って、チキンにかぶりついている園田さんが幸せの象徴のように思えた。