嵐を呼ぶ噂の学園④ 真冬でもあったかいのは愛です!編

色々ございましたが、クリスマスは遅れることなくやってきました!


午前10時。


開店と同時に、わたしと園田さん、藤宮さんは入店した。


爆音が店内の四方八方から聞こえてくるこの状況にびっくりしたが、園田さんは平気な顔をしてフリードリンクを酌んで部屋に向かった。


もちろん、1発目を飾ったのは園田さん。


今おそらく流行しているであろうアイドルの歌を歌っている。


わたしは流行に乗り遅れるタイプだから、全く最近の音楽を知らない。


ただ、アイドリングにはオタ芸が付き物だということだけは知っている。


テレビでそれをやっている男性達を見たことがあるけれど、わたしは恥ずかしくて出来ない。


尊敬に値するレベルだ。



「ことちゃーん!掛け声よろしく!」


「掛け声ってなんですか?!」



爆音に負けじとマイクなしで大声を出すものの園田さんには届かない。


藤宮さんはタンバリンで盛り上げてくれている。


仕方なくわたしは手が痛くなるほど、手拍子した。


歌い終わった園田さんは深々とお辞儀をし、



「サンキュー!」



と言ってマイクを置いた。


アーティストのライブを見ているかのような見事なステージだった。



「さて、次は誰かな~?」


「私が歌わせて頂きます」


「頑張れ羽鳥ちゃん!」


「がんばってください!」



イントロが流れ出す。


クリスマスっぽい感じの音楽だ。


どこかで聞いたことのある曲だけど名前が分からない。


サブカルに疎いわたしは着いていけていない。


そんなことにぐじぐじしていると、園田さんにタンバリンを渡された。



「盛り上げよう!」



いやでも、これはバラードなのでは?


藤宮さんも真剣に歌ってらっしゃるし、邪魔したら悪いような気がする。


わたしが躊躇しているうちに素晴らしい歌声は消えてしまった。



「終わりました」


「残念...。羽鳥ちゃん上手いからもっと聞いていたかった」


「いえいえ、そんなことは...」



と言ってる間に、わたしのリクエストした曲が始まる。


父が好きで幼い頃から良く聞いていた曲。


ドリカムの"未来予想図Ⅱ"。



「うわあ!ドリカムじゃん!」



それだけ言うと園田さんは口をつぐんだ。



「卒業してからもう3度目の春
相変わらずそばにある同じ笑顔」



音痴だと言われてから歌うことなんてなかった。


誰かに聞かせたいなんて思わなかった。


だけど今日はクリスマス。


2人が、大切な人といつまでも一緒に笑って過ごせますように。


そんな思いを込めて歌う。


メロディ、歌詞、息遣い。


その全てがわたしを包み込み、曲を作っていく。



「きっと何年経ってもこうして変わらぬ気持ちで過ごしてゆけるのね あなたとだから
ずっと心に描く未来予想図は
ほら思ったとおりに叶えられてく」