「なんだか素敵なお話ですね」


「森下先輩はとても素敵な先輩なんです。だから私より何倍も大人で上品で美しいカノジョさんがいらっしゃるに違いないと思っているんです。つまり、私の出る幕はないんです」


「そんなこと無いですよ!カノジョさんがいらっしゃるか聞いた訳ではありませんよね?」


「はい...そうですが...」


「だったら諦めないでください!まだチャンスはあります!チャンスがある限り当たって砕けてください!」



熱くて説教くさくなってしまった。


ごめんなさい、藤宮さん。


藤宮さんに幸せを掴みとってほしくてつい熱くなってしまった...。


そんな熱いわたしとは裏腹に外は凍えそうなくらい寒い。


ピューッと吹いてくる北風が何も身に付けていない顔面に当たるとひりひりし、次第にじんじんと痛んでくる。


ちらりと藤宮さんを見るとやはり前髪はガチガチのまま。


不自然なくらい崩れない。


努力の賜物だななんて思って見ていた、その時。