その晩。


同じホテルに泊まっていた赤星とオレは合流し、一條さんに汐泉を預けた。


赤星の部屋に荷物を全て持ってきたオレは寝る前に帰る準備をした。


明日は朝食を食べたら汐泉に会わず、すぐ帰るつもりだ。


赤星もそれでいいと言ってくれたから、オレは安心して帰ることができる。



「未練はないようだね」


「1ミリもない。終わったことでくよくよしていたくもない」


「そう。まあ、そういう心持ちなら失恋を何回しても大丈夫そうだね」


「いやいや、もう勘弁だ」



あはははは...。


笑い声が部屋に響き渡る。


やっぱ人間は笑ってないとダメだな。


心が死ぬわ。


全部ふっ切れて、何も無くなり、真っ白になった心。


次はどんな色に染まるのだろうか。



「波琉くん、帰ったら1番に誰に会いたい?世間はクリスマスイブだけど」


「別に1人で過ごせるし。1人でクリスマスを満喫するよ」


「そんなに強がらない方が人生うまくいくと思うよ」


「別に強がってない」



それに...


オレが今1番に会いたいやつは、きっと何も努力しなくても会えると思う。



「赤星」


「何?」


「色々とありがとな」



オレは素直に礼を言った。



「どういたしまして」



赤星はにこやかに笑って見せた。



「じゃあ、電気消すよ」


「よろしく」



ベッドの灯りがやや眩しい。


いつも極上のベッドで寝ているという赤星はベッドを独占し、オレはソファに予備の掛け布団をかけて眠った。