「眠いから先に寝る。お休み」



オレはタオルなどを放置してひとまず布団に潜り込んだ。


ダブルベッドだから逃げ場はない。


なら、寝てしまえばいい。


オレが寝てしまえば成り立たないのだから。


明日の朝にははっきりと言って帰らなければならないのだ。


一緒に帰る気などない。


終わったんだ、オレの初恋は...。


雪のように溶けてしまったんだよ。


だから汐泉。


オレをこれ以上、キミに近付けさせないでくれ。



「波琉くん、起きてよ」



起きない。



「こっち向いてよ」



向かない。



「波琉くん、ケチだなぁ」



ケチじゃない。


オレはここにいるっていうだけで、自分は優しいと思う。


普通の男だったら、愛想つかした女と一泊しないで帰るだろう。


このふかふかなベッドだけが救いなんだ。


このベッドに寝られるからここにいるんだよ。



「波琉くんが寝ちゃうなら、あたしも寝るね」



サッという音が聞こえる。


オレは目をつぶり、まるで冬眠中の動物のように身を丸くして襲撃に備えた。



「じゃあ、電気消すね」



大きなライトが消された。


汐泉の気配を感じる。



「お隣、失礼します」



遂にベッドイン。


戦いは始まる。