普段食べられないような豪華な食事は喉を通らず、普段入れない効能いっぱいの温泉も長く浸かっていられず、全く楽しめなかった。


足に疲労を感じていたため、足つぼマシンでマッサージして時間を稼ごうかとも思ったが痛すぎて断念し、結局ロビーにいることにした。


フリーWi-Fiを大いに利用し、YouTubeでくだらない動画を見ていると、後ろから抱きつかれた。


もう確保されてしまったか...。



「汐泉...」


「何見てたの?」


「別に」


「どうしたの?元気ないよね?」


「別に」


「波琉くん、別にしか言ってないよ。大丈夫?」


「大丈夫。スキーして疲れただけだから」



汐泉が腕を外し、前に回ってくる。


オレの目の前でしゃがみこむと、お得意の上目遣い攻撃を開始した。


これを可愛いと思う心は蒸発してしまった。


白目を剥き出して昇天してほしいなんていう、とんでもないことを考えていた。



「部屋に戻って、明日に備えて早く寝よう」



オレはひとまず頷いて、汐泉と手を繋ぎながら部屋に戻ったのだった。