昼休みになると、わたしと園田さんは藤宮さんのところに行った。


いじめを邪魔するためだ。


誰が来ようと、園田さんがいれば安心だ。


わたしは...まぁ、おまけ、かな。


おそらく、戦力外だろう。


口で応戦するのも難しそうだし、喧嘩となると役に立てないな。



「藤宮さんはいつもお昼はどうしてるの?」


「私は最初1人で部室で食べていました。でもすぐにあの方にばれてしまいまして、それからは教室で祖母のお手製のお弁当を食べています」


「へー、おばあちゃんのお手製か。すごいね!」


「私は祖母と母と3人で暮らしております。父は医者で、アフリカに行っておりましてほぼ日本に帰って来ることはなく、あまり会ったことはありません。母は高校の国語教師なのですが料理が苦手で...。それで代わりに祖母が作ってくれるんです」



藤宮さんはその後も色々話をしてくれた。


おばあさんは書道家で、小学生を対象とした書道教室をやっていること。


そんなおばあさんの影響で1歳で筆をとり、8段の腕前であること。


おばあさんとの遊びは専らかるたで、幼稚園生の頃からかるたをやっていて、今も尚、かるた部で腕を磨き続けているということ。


7月の全国大会では個人の部で準優勝だったこと。



そして、わたしと園田さんも色々と身の上話をし、気付いたら昼休みが終わりに近付いて来ていた。


園田さんと2人でも時間が過ぎるのが早いと感じるのに今日はさらに早く感じた。



「では私は歯磨きをして参りますので...」


「じゃああたしたちも着いてくわ。アイツら今日職員室に呼び出されたみたいだけど、脱走して来たらヤバイから」


「1人になった時に何かあると困りますから、安全が確認されるまではわたしたちがご一緒します」


「ありがとうございます。守られてばかりですみません...」


「いえいえ」


「かわいい子は守られて当然よ!」



なんて言いながらトイレに向かっている途中で、森下先輩と遭遇した。



「2人共、藤宮さんのボディーガードありがとう」


「当然のことをしているまでです」


「だけど放課後は僕に任せてね。部活中は僕が守るから。それを言いにいこうとしてたんだ」



藤宮さんは前髪を触りまくり、ドキドキをまぎらわそうとしているようだった。


頬も真っ赤になっている。


例えるとしたらさくらんぼみたいなほっぺ、かな。



「授業が終わったら迎えに来るから。じゃあ、また」



去っていく姿はさすが先輩だった。


学年が1年違うだけでこんなにも立ち振舞いが違うとは...。


わたしたちが子どもっぽいのかな。


やっぱりセブンティーンとエイティーンは落ち着きや余裕に差がある。


早くエイティーンになりたいな。


いや、その前にセブンティーンか。


あと数ヶ月でなるけれど。



「羽鳥ちゃん、大丈夫?」



見ると、藤宮さんは口をあんぐりと開け、遠くを見つめていた。


呆然とする藤宮さんに園田さんが一言。



「好きなんだね、森下先輩のこと」


「はい...。入部した時からずっと...」



そうだったんだ。


先輩のことを一途に思い続けているなんて、なんて素敵なんだろう。



「よし!あたし、羽鳥ちゃんの恋を全力で応援する!」


「わたしもお手伝いさせて下さい。大したことは出来ないかもしれませんが...」


「いえいえ、そんなことはございません!お二人は強い味方です!」


「違うよ、羽鳥ちゃん」


「えっ?」



園田さんがわたしと藤宮さんの間に入り、わたしたちの首に腕を回した。



「あたしたち、友だち、だよ」


「そうですね、友だちですね!」



藤宮さんは優しい微笑みを称えていた。



「園田さん、星名さん、よろしくお願いします」



新たな友情が芽生えた瞬間だった。