あなたの愛に包まれて

「お嬢様?しっかりなさってください。あなたたちのことは国内だけでなく、世界中の一流企業も注目をしています。政財界からのゲストも本日は多数いらっしゃっています。失敗は許されませんよ?」
剣持はあくまで千晃に対して、財閥を背負うものとしての心得をいつも厳しく伝える。

この剣持は以前は父の専属秘書を務めていた。

「わかっています」
千晃は自分の頬を自分でたたいた。

神崎千晃。25歳。大学を卒業してから神崎財閥の所有するいくつかの会社の社長やCEOとして経験を積んできた。徹底的に管理された中で生活してきた千晃は世間知らずとマスコミからバッシングを受けることも多い。それでも微々たるものだが成果を上げ始めている。

25歳で結婚か・・・。もっともっといろいろな経験がしたかった。

自分ひとりで街を歩いたり、ファーストフードを食べることにもあこがれる。
自分の着た衣服に履きたい靴、聞きたい音楽・・・。

そんな生活を夢見たまま、さらに自分の人生が政略結婚により決められてしまうものが増える息苦しさを感じずにはいられなかった。