着替えを済ませた千晃は最低限の化粧をして病室から出てきた。
すぐに匡祐が千晃の体を支える。
「裏口から出よう」
匡祐の言葉に千晃は首を横に振る。
「正面からです。」
千晃の表情はいつも報道陣に見せているような、マネキンのように熱を感じない表情に戻っていた。
「わかった」
匡祐は千晃を支えながら病院の正面入口へ向かう。
そこにはたくさんの報道陣がいて、匡祐たちが外へ出ると二人の体もぎゅうぎゅうとおされ、たくさんのフラッシュや怒鳴り声に近い質問の声が一斉に上がった。
千晃はついさっきの事件のことがフラッシュバックして、吐き気さえ感じた。
匡祐は足元がふらつき一気に顔色が青ざめる千晃に気づき、千晃を支える手に力を込め自分の体で包み込むように守りながら専用の車までの道を突き進んだ。

車に乗り込むとすぐに千晃は目を閉じた。
千晃の頭を支えて匡祐は自分の肩にもたれかけさせる。

匡祐に肩を抱かれながら千晃は息苦しさが和らぐのを感じた。