「力っ！？」
病院の処置室に駆け込んだ匡祐の目の前には点滴につながれた力がよこになっていた。
「肺炎で危ないところでした。現在は抗生物質と酸素を投与しています。目が覚めると暴れるので抑制しています。」
医師の言葉に匡祐が力の腕と足につけられた頑丈なベルトに手をかけた。

「福山さん」
医師の静止の声に匡祐は鋭い目を向ける。
「どうしてこんな風になるまで気が付かなかったんですか？」
低い匡祐の声に医師は戸惑いながら答える。
「お父様には何度か連絡をしていましたがおおごとにせず施設で様子を見るようにと言われていました。」
その言葉に匡祐は唇をかみしめた。

命にかかわる事態でも、父は財閥の体裁を気にする。そして優先する。

匡祐は唇から血を滲ませながら抑制ベルトを外した。
外したベルトを病室の床にたたきつける。