あなたの愛に包まれて

「突然婚約が決まって、今日は結婚までのスケジュールの相談だったでしょう。ずっと気になっていたんです。」
匡祐が運転しながら千晃に話始める。
「あっ、プロフィールで俺のほうが年上だってなってたから、二人でいるときは敬語じゃなくてもいいですか?」
今更?と思いながら千晃はもちろんと返事を返した。
「今時こんな政略結婚、珍しいでしょ?」
「・・・」
千晃は何も返事ができないでいる。
「きっともう知ってると思うけど、俺は福山財閥の後継者になって日が浅い。愛人の子だからと世間からも福山財閥のなかでも俺をよく思わない人が多い。」
「・・・」
「そこにあなたを巻き込んでしまうのが心苦しい。これが俺の本心です。」
千晃は相手が匡祐でよかったと思った。
「ごめんなさい。こんなことに巻き込んで。相手が俺なんかで。」
「いえ。」
そっけない返事しかできない自分に千晃は小さくため息をついた。