千晃がどんなにそばにいても、手を握っても、抱きしめても、匡祐の悲しみは癒えることはなかった。

千晃は匡祐が仕事ができなくなってしまった分も必死に福山を支えようとした。
でも、事件を知った世間の福山財閥に対する風当たりはかなり厳しく、財閥自体が解散に追いやられる事態となってしまった。

匡祐は感情を失った状態で千晃に離婚届を渡した。
このままでは千晃も自分の狂った人生に巻き込んでしまう。

大きな負債を背負った匡祐は千晃と離婚をして、一人ですべてを背負い生きていくことを決めていた。まるでそれが力の命を奪ってしまった自分へのバツのように・・・。
千晃が何を言っても、もう匡祐は聞く耳すら持ってはくれない。

最後に匡祐と話をしたとき、匡祐は千晃にこう話した。
「俺は千晃を愛しているから、別れたいんだ。これ以上、俺が俺であることを後悔しないために、離婚してほしい。俺を忘れて、歩んでほしい。千晃の幸せが、俺の希望だから・・・。」

その言葉に千晃はそれ以上何も言えなかった。