あなたの愛に包まれて

「お嬢様」
新しい秘書が千晃の部屋に入ってきた。
「1時より会議があります。お着換えください。」
千晃は秘書に目も向けずその場で着ていた服を脱ぎ始める。
新しい秘書は同年代の男性。千晃が目の前で服を脱いでも目もくれずに仕事を淡々とこなしていく。
さすが父が送り込んできた人だと千晃は思った。
「出て行って。常識に欠ける人ね。」
千晃の言葉に
「申し訳ございません。しかし、お嬢様を信用しないようにとお父様より言付かっておりますので。」
冷ややかな目を向ける秘書に千晃の心はさらに冷え切っていった。



季節は秋から冬になろうとしていた。千晃は木々の葉が落ちるのを窓から見ていた。
新しい秘書が来てから匡祐との連絡も制限されていて全くできない。
秘書が匡祐からの連絡も、匡祐が会社に来ても面会させずに返していることなど千晃は知らなかった。携帯電話も千晃のものは取り上げられている。