「本日のお召し物ですが、神崎財閥のものばかりでは困ります。福山はタイピンや靴を神崎財閥の企業のものを使用しておりますので、神崎様も我が財閥のものを身に着けていただきませんと困ります。」
スタッフが箱を開けるとそこにはたくさんの靴やアクセサリー、衣装が入っていた。

千晃は自分で服を選んだことがなかった。いつも自分の財閥のPRのために身に着けるものが決められていた。化粧品すら選べない。その日に使用する化粧の下地や口紅もすべて決められている。
自分の財閥以外のものを身に着けるときは、企業との経営合体や、共同のプロジェクトがあるときなど、決められている。

千晃にとって助川の話はすぐに受け入れられるものだった。

しかし剣持は表情が険しい。

「今回のドレスは神崎財閥の新作です。このドレスは絶対に本日お嬢様に着ていただかないと困ります。本日の化粧品に関しましては春の新作として発売されております。すでにSNSにて本日のお嬢様の使用しているものとして紹介されておりますので変更は不可能です。それから・・・」
剣持の話に助川に気づかれないように千晃はため息をついた。