ガッ
急に私の制服が引っ張られる。
目を開けると目の前には赤信号。
足元を見ると、点字ブロックの真上だった。

「考えすぎじゃねえか?」
『あ…ごめん…ありがと』


さささっと後ろに下がる。


「そんなに悩むこと?」
『だって…自分の彼氏なんだったら、もっともっといっぱい相手の事知りたいなって思うでしょ?いっつも自分の話聞いてばっかだし…。』


言ってから気づく。
自分は話を聞いてくれたら嬉しいけど、もしかしたら彼はあまり自分のことを知られたくない人かもしれない。
しかも、相手のスマホの話。
そりゃ、言いたくないこともあるよね。


『いや…ごめん。もういいや。だったらしょうがない。』
「は?」
『言いたくないことも皆あるよね。色々探るようなことしてごめん』


信号が青に変わる。
私は足を進めた。


チッ


後ろから舌打ちらしき音が聞こえる。
後ろを向くと、彼がこっちに歩いてきて私の手を取った。


「こっち来い」


彼にそうムリヤリ信号を渡らされ、道の少し脇へと移動した。
すると、スマホを取り出す彼。
ふーっと深呼吸し、スマホの画面をこちらに向ける。


「…多分謝るのはこっち」


そこには私が写った写真があった。
この前、パンケーキ屋さんに一緒に行ったときのだ。


『いつこんなの…』
「…別にこれ見て笑ってねぇからな」


たった一枚の写真。
でも、それが彼に好かれてるんだなぁって嬉しくて嬉しくて。
彼を見ると、彼は下を向き、耳が少し赤かった。


『私のこと、大好きじゃん』


嬉しさのあまり、そんなことを言ってしまう。


「馬鹿、うるせー。好きで悪いかよ。でも、もうこの写真は消すから」


そう言って、削除しようとする彼。
何故だか分からないけど、反射的にその手を止めていた。


『あ…いや、その~…』
「何?」
『け…け、消すの?』
「嫌?」
『い…嫌…なのかなぁ?』
「じゃあ消す」
『ごめんごめんごめん!!!嫌じゃない!!嫌じゃないです!!!』
「隠されて撮られてんのに?」
『それでもいいの』
「…お前、変なやつ」


フッと笑う彼。
私も一緒にへへっと笑う。


「ほら、行くぞ」


私は彼の腕に手を伸ばした。
そのままきゅっと体を寄せる。


「やめろよ、近すぎ」


彼は私のおでこにぺしっとデコピンをする。
互いにふふっと笑う。
今日朝一番にあなたの笑顔を見れました。
それが、とっても嬉しかったです。
互いにシャッターを切るまであと3・2・1…