「むしろ・・・・。」
「・・・・・・・・・・。」
「忘れた事はありませんよ。
皮膚が焼かれていくあの痛みを。
私の人生が幸せから一転した・・あの悪夢の日を・・。」
「まず、当時の“証言”について再確認させてください。
山本さんが見たのは本当に30~40代の男でしたか?」
「間違いありません。
顔を見たのは一瞬でしたが、
私と同年代ぐらいの人間でした。」
「その時に犯人が身につけていたものや、
顔以外で何か覚えている事は?」
「夜だったのでハッキリとはしませんが・・全体的に黒かったと思います。
マスクをつけ、帽子を目深に被って。
それからスプレーを吹きかけられた時、
手袋をしていたのも一瞬ですが見ました。」
「身長はどうでしたか?」
「低い方だったと思います。
私も170㎝とそんなに高いほうではありませんが、こう・・・・。」
山本さんが俺の方に向き直り、
右手を少し上に上げる。
天井にいる蚊にキンチョールを吹きかけるように・・右手を45°クイッと上げた。
「このようにして私にスプレーを掛けてきましたから。
私より確実に身長は低かったはずです。」