“ガチャリ”


「お父さんただいまー。」


「・・・・・・・・・オカエリ。」






「こっち座って!」

「ありがとう。」


「今お茶出しますね。」

「あ!いえそんな!
お気遣いなく・・。」


「あ、お母さん。
テル君は紅茶だからねっ。」

「はいはい・・。
ちゃんと打ち合わせ通りねっ。」

「もうっ余計な事は言わなくていいの~。」


「わざわざすみません・・。あ!これ・・つまらない物ですが宜しければ・・。」

「まぁ銀座でわざわざ買ってきてくれたの?ありがとうねぇ。」





・・・完全に・・・
タイミングを逸してしまった・・。


新聞紙を隔てた向こうで、
何ターンもの会話が繰り広げられている中、

背筋を張って硬直したまま、もう4回目となる昨日の大相撲の星取り表を眺め・・・



“パサッ!”

「アッ・・。」

「もうお父さん!
いつまで新聞読んでるの!?」


「・・・・・・・・・・・・・。」


目の前に、“プン”と怒った娘・・。

その向こうで椅子に座っていた青年が立ち上がり・・・


「は、初めまして。
大野テルヨシと申します。

ほ、本日はお招き頂きありがとうございます。」


「・・・・・うん・・・どうも。」